新リース会計基準移行時の注意点と失敗しない準備計画

  • URLをコピーしました!

新リース会計基準移行時の注意点と失敗しない準備計画

企業会計の世界で大きな変革となる新リース会計基準の適用が迫っています。この基準変更は単なる会計処理の変更にとどまらず、企業の財務指標や経営判断にも大きな影響を与える可能性があります。特に多くのリース契約を抱える企業にとっては、移行準備を計画的に進めることが不可欠です。

本記事では、新リース会計基準の概要から実際の移行プロセスまで、企業が直面する課題と対応策を詳しく解説します。会計基準の変更は一見すると専門的で難解に思えますが、適切な準備と理解があれば、スムーズな移行が可能です。

これから解説する内容は、経理財務部門だけでなく、経営層や調達部門、IT部門など、企業全体で共有すべき重要な情報となります。新リース会計基準への対応を成功させるためのロードマップとして、ぜひ参考にしてください。

目次

新リース会計基準の概要と主要な変更点

まず、新リース会計基準とは何か、そしてなぜこのタイミングで変更が行われるのかを理解することが重要です。基準変更の背景から具体的な変更点、そして適用スケジュールまでを見ていきましょう。

新リース会計基準導入の背景と目的

新リース会計基準は、国際会計基準審議会(IASB)が2016年に公表したIFRS第16号「リース」および米国財務会計基準審議会(FASB)が公表したASC Topic 842を踏まえ、日本でも企業会計基準委員会(ASBJ)によって策定されました。

この基準改正の最大の目的は、これまでオフバランス処理されていた多くのリース取引を貸借対照表に計上することで、企業の財務状況をより透明かつ正確に表示することにあります。従来の基準では、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区別し、後者はオフバランス処理が認められていましたが、実質的には長期的な債務を伴うケースも多く、財務諸表利用者にとって企業の真の負債状況が把握しにくいという課題がありました。

また、グローバルな会計基準との整合性を図ることで、国際的な投資家にとっても比較可能性の高い財務情報を提供することが可能になります。

旧基準との主な相違点

新リース会計基準における最も重要な変更点は以下の通りです:

  • オペレーティング・リースを含む、ほぼすべてのリース契約がオンバランス化
  • 使用権資産(Right-of-Use Asset)とリース負債の両方を計上
  • リース期間が12ヶ月以内の短期リースや少額資産のリースについては例外規定あり
  • リース負債は、将来のリース料を現在価値に割り引いて計算
  • 損益計算書では、減価償却費と支払利息に分けて計上(従来のオペレーティング・リースではリース料として一括計上)

これらの変更により、特に多数の不動産リースや設備リースを有する企業では、資産・負債が大幅に増加することになります。また、損益計算書上では費用認識のパターンが変わり、リース期間の前半により多くの費用が計上される傾向があります。

適用対象企業と適用時期

企業区分 強制適用開始時期 早期適用
上場企業(IFRS採用企業) 2019年1月1日以降開始事業年度 可能
上場企業(日本基準採用) 2022年4月1日以降開始事業年度 可能
非上場企業 2023年4月1日以降開始事業年度 可能
株式会社プロシップ
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋三丁目8番5号 住友不動産飯田橋駅前ビル 9F
https://www.proship.co.jp/
会計システム提供企業として対応済み

日本基準を採用している企業においても、段階的に新リース会計基準の適用が始まっています。上場企業は既に移行期間に入っており、非上場企業もこれに続く形で適用が進められます。

なお、早期適用も認められているため、グループ企業間での会計処理の統一や、国際的な比較可能性を重視する企業では、前倒しでの対応を進めているケースもあります。

新リース会計基準移行時の主な課題と対応策

新リース会計基準への移行は、単なる会計処理の変更にとどまらず、多くの実務的な課題を伴います。ここでは、企業が直面する主な課題と、それに対する効果的な対応策を解説します。

リース契約の棚卸しと分類作業

新リース会計基準への移行における最初のステップは、企業が保有するすべてのリース契約を洗い出し、適切に分類することです。

多くの企業では、リース契約が各部門で個別に管理されており、全社的な把握ができていないケースが少なくありません。特に、従来オペレーティング・リースとして扱われていた不動産賃貸借契約や、リース要素を含む可能性のあるサービス契約なども含めて、網羅的に調査する必要があります。

対応策としては、以下のアプローチが効果的です:

  • 全社的なリース契約調査チームの編成
  • 標準化された調査フォーマットの作成と配布
  • 契約書の電子化と中央管理システムの構築
  • リース識別のためのチェックリストの活用
  • 非リース要素(サービス部分)の分離と配分方法の決定

棚卸し後は、各契約が新基準下でどのように扱われるかを判断し、使用権資産とリース負債の計算に必要なデータ(リース期間、割引率、変動リース料の有無など)を整理していきます。

システム対応と業務フロー見直し

新リース会計基準に対応するためには、既存の会計システムや業務プロセスの見直しが不可欠です。特に、以下の点について検討が必要となります:

  1. リース契約管理システムの導入または拡張
  2. リース資産・負債の計算機能の実装
  3. 減価償却スケジュールと利息費用の自動計算
  4. 契約変更時の再測定プロセスの整備
  5. 開示要件に対応したレポーティング機能

システム対応と並行して、契約締結から会計処理、開示に至るまでの業務フローも再設計する必要があります。特に、リース契約の変更や更新時の情報伝達経路を明確にし、会計処理に必要な情報が適時に経理部門に届く仕組みづくりが重要です。

また、移行期には旧基準と新基準の並行運用が必要になる場合もあるため、二重管理による業務負荷の増大にも注意が必要です。

財務指標への影響分析

新リース会計基準の適用は、企業の主要財務指標に大きな影響を与える可能性があります。特に以下の指標について、事前に影響を分析しておくことが重要です:

財務指標 予想される影響 対応策
総資産利益率(ROA) 資産増加により低下傾向 投資家向け説明資料の準備
自己資本比率 負債増加により低下傾向 財務戦略の見直し
EBITDA 増加傾向(リース料が減価償却費と支払利息に) 業績評価指標の調整
負債比率(D/Eレシオ) 上昇傾向 財務制限条項の再交渉

これらの財務指標の変動は、投資家の評価や銀行との融資契約、役員報酬の業績連動部分など、様々な面に影響を及ぼします。特に財務制限条項(コベナンツ)を含む融資契約がある場合は、早めに金融機関との協議を始めることをお勧めします。

失敗しない新リース会計基準への移行計画

新リース会計基準への移行を成功させるためには、綿密な計画と全社的な取り組みが必要です。ここでは、効果的な移行プロジェクトの進め方について解説します。

移行プロジェクトのタイムライン設計

新リース会計基準への移行は、一般的に12〜18ヶ月程度の準備期間を要する大規模プロジェクトとなります。以下に理想的なタイムラインを示します:

  1. 影響評価フェーズ(3〜4ヶ月)
    • プロジェクトチームの編成
    • 現状分析と影響範囲の特定
    • リソース要件と予算の策定
  2. 設計フェーズ(3〜4ヶ月)
    • 会計方針の決定
    • 業務プロセスの再設計
    • システム要件の定義
  3. 実装フェーズ(4〜6ヶ月)
    • システム構築・カスタマイズ
    • データ移行
    • テストと検証
  4. 移行フェーズ(2〜4ヶ月)
    • パイロット運用
    • 社内教育
    • 並行稼働

特に重要なのは、十分な準備期間を確保することです。多くの企業が移行プロジェクトの規模を過小評価し、時間不足に陥るケースが見られます。早期に開始し、各フェーズで適切なマイルストーンを設定することで、進捗管理を効果的に行いましょう。

社内教育と関係部門の巻き込み方

新リース会計基準への移行は、経理・財務部門だけの問題ではありません。全社的な理解と協力が不可欠です。特に以下の部門との連携が重要となります:

  • 経営層:財務指標への影響と経営判断への関わりを理解
  • 調達部門:リース契約締結時の情報収集と契約内容の見直し
  • 法務部門:契約書の標準化と必要条項の整備
  • IT部門:システム要件の実装と既存システムとの連携
  • 事業部門:リース契約の実態把握と変更時の報告体制

効果的な社内教育のためには、部門ごとに必要な知識レベルを見極め、適切な教育プログラムを提供することが重要です。経営層には財務影響を中心に、現場担当者には実務的な変更点を重点的に説明するなど、対象に合わせたアプローチが効果的です。

また、定期的な進捗報告会や部門横断のワーキンググループを設置することで、プロジェクト全体の透明性を高め、関係者の当事者意識を醸成することができます。

外部専門家の活用ポイント

新リース会計基準への移行は専門性の高い作業を含むため、外部の専門家を活用することも検討すべきです。以下のタイミングと選定ポイントを参考にしてください:

活用タイミング 専門家の種類 期待される支援内容
影響評価フェーズ 会計専門家(監査法人等) 会計方針の検討、影響分析
設計フェーズ 業務コンサルタント 業務プロセス再設計、要件定義
実装フェーズ システムベンダー システム構築、データ移行
移行フェーズ 会計専門家、教育コンサルタント 検証支援、社内教育

外部専門家を選定する際は、新リース会計基準に関する具体的な支援実績や、自社と類似した規模・業種での導入経験を重視すると良いでしょう。また、単なる助言だけでなく、実務的な支援も提供できるパートナーを選ぶことが重要です。

新リース会計基準移行の成功事例と失敗から学ぶ教訓

新リース会計基準への移行は多くの企業が直面している課題ですが、先行して取り組んだ企業の事例から学ぶことができます。ここでは、成功事例と失敗例から得られる教訓を紹介します。

先行導入企業の成功事例

新リース会計基準を早期に導入し、成功を収めた企業には共通する特徴があります:

  • 十分な準備期間の確保:適用開始の18〜24ヶ月前からプロジェクトを開始
  • 経営層の関与:CFOや経営層が定期的に進捗をモニタリングし、必要なリソースを確保
  • 専門チームの編成:会計、IT、法務など各分野の専門家を集めた横断的なチーム構成
  • 段階的アプローチ:パイロット部門での試行を経て、全社展開するステップバイステップの導入
  • データ品質の重視:契約データの精度向上に特に注力し、自動化の基盤を整備

例えば、ある大手小売業では、店舗の賃貸借契約を中心に数千件のリース契約を管理する必要がありましたが、専用のリース管理システムを導入し、契約データベースを一元化することで効率的な移行を実現しました。また、財務指標への影響を早期に分析し、投資家向けの説明資料を事前に準備したことで、市場の不安を払拭することにも成功しています。

よくある失敗パターンと回避策

一方で、新リース会計基準への移行において多くの企業が陥りがちな失敗パターンもあります:

  1. 準備期間の不足
    • 回避策:少なくとも12ヶ月以上の準備期間を確保し、現実的なスケジュールを策定
  2. リース契約の把握漏れ
    • 回避策:複数の情報源(契約書、支払記録、固定資産台帳など)を照合し、網羅性を確保
  3. システム対応の遅れ
    • 回避策:早期にシステム要件を定義し、ベンダー選定から実装までの十分な時間を確保
  4. 関連部門の巻き込み不足
    • 回避策:プロジェクト初期から全関連部門を参画させ、責任と役割を明確化
  5. 開示要件への対応遅れ
    • 回避策:開示要件を早期に把握し、必要なデータ収集の仕組みを構築

特に注意すべきは、リース契約の把握漏れです。多くの企業では、契約書の形式を取らないリース取引や、リース要素を含むサービス契約の識別が不十分なケースが見られます。網羅的な調査と、会計・法務の専門家による判断が重要です。

監査対応のポイント

新リース会計基準への移行において、監査法人との適切なコミュニケーションは非常に重要です。特に以下のポイントに注意しましょう:

  • 早期からの協議:会計方針や重要な判断事項については、プロジェクト初期段階から監査法人と協議
  • 文書化の徹底:リース識別の判断プロセスや割引率の決定方法など、重要な判断の根拠を文書化
  • 移行方法の合意:遡及適用か修正遡及適用かなど、移行方法について早期に合意
  • サンプルテスト:本格適用前に、典型的なケースについて計算結果を監査法人と共有し、方法論を確認
  • 開示内容の事前レビュー:特に初年度の開示内容については、ドラフト段階で監査法人のレビューを受ける

監査法人も新リース会計基準の適用は初めての経験となるケースが多いため、論点によっては見解の調整に時間を要することもあります。十分な協議時間を確保し、認識の相違を早期に解消することが重要です。

まとめ

新リース会計基準への移行は、多くの企業にとって大きな変革となりますが、適切な準備と計画的なアプローチによって、円滑な移行が可能です。本記事で解説した以下のポイントを押さえることが重要です:

  • 基準変更の本質を理解し、財務諸表への影響を事前に分析する
  • 十分な準備期間を確保し、段階的なアプローチで移行を進める
  • 全社的な取り組みとして、関連部門を早期から巻き込む
  • データの網羅性と正確性を確保し、システム対応を計画的に進める
  • 監査法人や外部専門家と適切に連携し、専門的知見を活用する

新リース会計基準は単なるコンプライアンス対応ではなく、リース資産の管理体制強化や意思決定プロセスの改善につながる機会でもあります。この変革を前向きに捉え、企業の財務管理体制の強化につなげていくことが重要です。

計画的な準備と全社的な取り組みによって、新リース会計基準への移行を成功させ、より透明性の高い財務報告体制を構築しましょう。

【PR】関連サイト

株式会社プロシップ

詳細情報

〒102-0072 東京都千代田区飯田橋三丁目8番5号 住友不動産飯田橋駅前ビル 9F

URL:https://www.proship.co.jp/

GoogleMAP情報はコチラから

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次