【雛形あり】SNSガイドラインの作り方を徹底解説!企業の炎上リスクを防ぐ必須項目とは?

  • URLをコピーしました!

企業のSNS運用における炎上リスク、どう対策すれば良いかお悩みではありませんか?従業員の個人的な投稿が、会社の信用を大きく損なう事態も少なくありません。こうしたリスクから企業ブランドと従業員を守るためには、明確なルールを定めた「SNSガイドライン」の策定が結論として不可欠です。本記事では、コピーして使える雛形を参考に、SNSガイドラインの作り方を5つのステップで分かりやすく解説します。公式アカウントの運用ルールから全従業員が守るべきポリシーの必須項目、著作権などの注意点、そして炎上発生時の対応フローまで網羅。この記事を読めば、法務リスクも踏まえた実用的なガイドラインを誰でも作成できます。

目次

SNSガイドラインとは?企業に必要不可欠な2つの理由

SNSガイドラインとは、企業に所属する役員や従業員が、ソーシャルメディアを利用する際の行動規範やルールを明文化した指針のことです。現代のビジネス環境において、X(旧Twitter)やInstagram、FacebookといったSNSは、企業の広報・マーケティング活動に欠かせないツールとなりました。しかし、その強力な拡散力は、たった一つの不適切な投稿が企業の信用を瞬く間に失墜させる「炎上」リスクと常に隣り合わせです。SNSガイドラインは、このようなリスクを管理し、企業の価値を守るために不可欠な存在と言えます。なぜ今、すべての企業にSNSガイドラインが必要なのか、その理由は大きく2つあります。

企業のレピュテーションリスクと炎上を防ぐため

SNSガイドラインが必要な第一の理由は、企業のレピュテーション(評判)を深刻なリスクから守り、炎上を未然に防ぐためです。個人の発信が瞬時に世界中に拡散されるSNSの世界では、従業員一人の不用意な投稿が、会社の公式見解と誤解されたり、批判の的になったりするケースが後を絶ちません。一度炎上が発生すると、企業イメージの低下、製品・サービスの不買運動、株価の下落、採用活動への悪影響など、事業の根幹を揺るがす甚大な被害につながる可能性があります。

具体的に、SNS利用に際しては以下のようなリスクが常に潜んでいます。

リスクの種類具体的な内容・事例
機密情報・個人情報の漏洩・未発表の新製品情報や社内の人事情報を投稿してしまう
・顧客や取引先の情報を本人の許可なく公開してしまう
・店舗のバックヤードで撮影した写真に個人情報が写り込んでしまう
不適切発言・ハラスメント・特定の個人や団体、国籍、人種、宗教などに対する差別的・誹謗中傷的な発言
・公序良俗に反する投稿や、反社会的な言動の公開
・取引先や顧客への不満、悪口の投稿
第三者の権利侵害・他者が制作したイラスト、写真、文章などを無断で転載する(著作権侵害)
・他人の顔がはっきりわかる写真を許可なく投稿する(肖像権侵害)
・有名ブランドのロゴなどを無断で使用する(商標権侵害)
ステルスマーケティング(ステマ)の疑い・企業の従業員であることを隠して、自社製品を過度に称賛する口コミを投稿する
・広告であることを明記せずに、インフルエンサーに宣伝を依頼する

SNSガイドラインを策定し、全従業員に周知徹底することで、こうしたリスクに対する意識を高め、不用意な投稿によるトラブルを未然に防止することができます。これは、企業にとって最低限の危機管理・リスクマネジメントと言えるでしょう。

従業員と会社のブランド価値を守るため

SNSガイドラインは、単にリスクを防ぐための「守り」のツールだけではありません。従業員と会社の双方を守り、企業のブランド価値を積極的に高めていくための「攻め」の基盤にもなり得ます。明確なルールがない状態では、従業員は何をどこまで発信して良いのかわからず、SNSの利用そのものに萎縮してしまいます。

ガイドラインによって「やってはいけないこと」と同時に「やっても良いこと」「推奨されること」を明確にすることで、従業員は安心してSNSを利用できます。これにより、意図せず会社に損害を与えてしまったり、個人が誹謗中傷の的になったりするリスクから従業員自身を守ることにつながります。安心して利用できる環境は、従業員による自社の魅力発信や、顧客とのポジティブなコミュニケーションを促進し、結果として企業のブランドイメージやエンゲージメントの向上に貢献します。

従業員一人ひとりが「会社の代表である」という自覚を持ち、一貫したコンプライアンス意識のもとで情報発信を行うカルチャーを醸成すること。それこそが、SNS時代における強固なブランド価値の構築に不可欠です。SNSガイドラインは、そのための道しるべとなる重要な役割を担っているのです。

SNSガイドラインの主な種類とそれぞれの役割

一口に「SNSガイドライン」と言っても、その目的や対象者によって大きく2つの種類に分けられます。それは、企業の公式アカウント運用担当者に向けた「SNS運用ガイドライン」と、全従業員を対象とした「ソーシャルメディアポリシー」です。これらは両輪であり、どちらか一方だけでは企業のSNSリスクを十分に管理することはできません。それぞれの役割と違いを正しく理解し、自社に必要なガイドラインを整備することが極めて重要です。ここでは、それぞれのガイドラインが持つ役割と特徴について詳しく解説します。

企業公式アカウント向けSNS運用ガイドライン全従業員向けソーシャルメディアポリシー
対象者広報、マーケティング部など、公式アカウントの運用担当者役員、正社員、契約社員、アルバイトなど全ての従業員
主な目的ブランドイメージ向上、効果的な情報発信、顧客とのコミュニケーション促進(攻めの側面)従業員の不適切なSNS利用による炎上や情報漏洩などのリスク防止(守りの側面)
内容の主眼投稿内容の品質担保、運用フローの標準化、緊急時の対応手順など、具体的な運用方法SNS利用における基本姿勢、禁止事項、遵守すべきコンプライアンスなど、行動規範

企業公式アカウント向けのSNS運用ガイドライン

「SNS運用ガイドライン」は、企業の「顔」となる公式アカウントを運用する担当者(広報、マーケティング、カスタマーサポートなど)を対象とした、より実践的な手引書です。その最大の目的は、企業のブランド価値を高め、SNSマーケティングの効果を最大化するための「攻め」の運用と、炎上などを防ぐ「守り」の運用を両立させることにあります。

このガイドラインでは、アカウントの目的やターゲット層(ペルソナ)を明確に定義し、それに沿った投稿のトーン&マナー(文体、言葉遣い、絵文字の使い方など)を定めます。また、誰が投稿を作成し、誰が承認するのかといった投稿承認フローや、コメント・DMへの返信基準、対応時間などのコミュニケーションルールも具体的に規定します。これにより、担当者が変わっても運用方針に一貫性が保たれ、属人化を防ぐことができます。さらに、炎上やアカウントの乗っ取りといった緊急事態が発生した際の報告体制や対応手順を定めておくことで、迅速かつ適切な初期対応を可能にし、被害の拡大を防ぎます。

全従業員を対象としたソーシャルメディアポリシー

「ソーシャルメディアポリシー」は、役員からアルバイト・パートまで、組織に所属する全従業員を対象としたSNS利用に関する基本方針や行動規範を示すものです。従業員が個人で利用するSNSアカウントも対象となり、その主な目的は、従業員個人の不適切な発信が原因で発生する企業のレピュテーションリスク(信用の失墜)や情報漏洩を防ぐ「守り」の役割を担います。

このポリシーでは、会社の機密情報や顧客の個人情報、未公開の情報を投稿しないといった情報管理の基本ルールを徹底させます。また、他者への誹謗中傷や差別的な発言、ハラスメント行為の禁止、著作権や肖像権といった第三者の権利を侵害しないことなど、コンプライアンス遵守の重要性を明確に伝えます。従業員が会社の所属であることを明らかにして発信する場合の注意点や、個人の見解であることが明確にわかるようにするための免責事項の記載を推奨することも有効です。このポリシーを策定し、全従業員に周知・教育することで、従業員一人ひとりのリスク意識とリテラシーを高め、会社全体をSNSに起因するトラブルから守ります。

【5ステップで完成】SNSガイドラインの作り方と流れ

SNSガイドライン作成の5ステップ 1 目的を明確にする 何のために作成するのか(リスク回避・ブランド維持など)を言語化 2 適用範囲を定める 対象者(雇用形態)と対象メディア(個人アカウント含むか)を定義 3 必須項目を洗い出す 禁止事項、機密情報の扱い、炎上時の対応フローなどをリストアップ 4 雛形を参考に草案作成 他社事例やテンプレートを参考に、自社の実情に合わせてカスタマイズ 5 専門家によるリーガルチェック 法的リスクや不備がないか、弁護士等の専門家に確認を依頼

SNSガイドラインは、やみくもに作成を始めても実効性のあるものにはなりません。企業の状況に合わせて、然るべき手順を踏んで策定することが不可欠です。ここでは、誰でも迷わずSNSガイドラインを作成できるよう、具体的な5つのステップに分けてその流れを詳しく解説します。

ステップ1 ガイドライン策定の目的を明確にする

最初のステップは、「何のためにSNSガイドラインを作成するのか」という目的を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、内容が総花的になったり、本当に防ぎたいリスクに対応できなかったりする可能性があります。目的を具体的に設定することで、ガイドライン全体の方向性が定まり、盛り込むべき項目の優先順位もつけやすくなります。

主な目的としては、以下のようなものが考えられます。

  • 企業のブランドイメージや信頼性の維持・向上
  • 従業員による不適切な投稿や情報漏洩に起因する「デジタル炎上」の防止
  • 従業員個人のプライバシーと企業のブランド価値の両方を守る
  • SNS運用におけるコンプライアンス意識の徹底
  • 緊急事態(炎上など)発生時の迅速かつ統一された対応の実現

まずは自社がSNSに関してどのような課題を抱えており、ガイドラインによって何を実現したいのかを関係部署で議論し、言語化しましょう。

ステップ2 ガイドラインの適用範囲を定める

次に、作成するガイドラインを「誰に」「どの範囲まで」適用するのかを具体的に定めます。適用範囲が不明確だと、いざという時に「自分は対象外だと思っていた」といったトラブルに発展しかねません。対象者と対象メディアを明確に定義することが重要です。特に、従業員の個人アカウントでの業務に関する発信をどこまで許容し、どこからをガイドラインの対象とするかは慎重に検討する必要があります。

分類検討すべき範囲の例注意点
対象者正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パート、役員、業務委託先の担当者など、業務に関わるすべての人雇用形態によって適用の仕方が変わる可能性があるため、弁護士などの専門家と相談しながら定義することが望ましいです。
対象メディアX(旧Twitter)、Instagram、Facebook、TikTok、LINE、YouTubeなどのSNSプラットフォーム、ブログ、電子掲示板など、インターネット上で情報を発信できるすべてのメディア企業の公式アカウントだけでなく、従業員の個人アカウントにおける業務関連の発信も対象に含めるかを明確に規定します。

ステップ3 盛り込むべき必須項目を洗い出す

目的と適用範囲が固まったら、ガイドラインに具体的にどのような内容を盛り込むべきか、必須項目を洗い出します。この段階では、まず必要な項目を網羅的にリストアップすることに集中しましょう。各項目の詳細な文面は次のステップで作成します。

一般的に、SNSガイドラインには以下のような項目が含まれます。これらをベースに、自社の業種や企業文化、ステップ1で定めた目的に応じて、必要な項目を追加・削除してください。

  • 基本方針と目的
  • SNS利用における心構えと責任の所在
  • 具体的な禁止事項(情報漏洩、誹謗中傷、ハラスメント、権利侵害など)
  • 個人情報・機密情報の取り扱い
  • 著作権や肖像権など第三者の権利の尊重
  • 炎上など緊急事態発生時の対応フロー
  • ガイドライン違反時の罰則規定
  • 社内の相談窓口

ステップ4 雛形を参考に草案を作成する

必須項目を洗い出したら、いよいよガイドラインの草案を作成します。ゼロから文章を作成するのは大変な作業ですので、信頼できる機関が公開している雛形(テンプレート)や、他社が公開しているSNSガイドラインを参考にするのが効率的です。

例えば、一部の企業では自社のソーシャルメディアポリシーをウェブサイトで公開しています。同業他社や先進的な取り組みをしている企業の事例は、自社のガイドラインを作成する上で非常に参考になります。

ただし、最も重要なのは、雛形や他社の事例をそのまま流用しないことです。必ずステップ1で定めた自社の目的に立ち返り、業種や企業文化、従業員のITリテラシーのレベルなどを考慮して、自社の実情に合わせた内容にカスタマイズしてください。誰が読んでも理解できる、具体的で分かりやすい言葉で記述することを心がけましょう。

ステップ5 専門家によるリーガルチェックを行う

草案が完成したら、必ず最後のステップとして専門家によるリーガルチェックを受けましょう。SNSの利用は、著作権法、商標法、個人情報保護法、景品表示法といった様々な法律に関わります。法的な観点でのレビューを怠ると、ガイドライン自体に法的な不備が含まれ、かえって企業のリスクを高めてしまう恐れがあります。

特に、禁止事項の定義や罰則規定、従業員のプライバシー権との兼ね合いなどは、法的な専門知識が不可欠な領域です。企業法務に詳しい弁護士や、SNSリスクに特化した専門家に依頼し、内容の妥当性や法的なリスクがないかを隅々まで確認してもらうことで、安心して運用できる実効性の高いガイドラインが完成します。

SNSガイドラインに必ず含めるべき必須項目を徹底解説

SNSガイドライン 8つの必須項目 1 基本方針と目的 策定理由・ブランド価値の保護・コンプライアンス 2 心構えと責任 公私の区別・誠実な態度・デジタルタトゥーの意識 3 具体的な禁止事項 誹謗中傷・差別的発言・公序良俗違反の禁止 4 情報の取り扱い 機密情報・顧客個人情報の漏洩防止徹底 5 第三者の権利 著作権・肖像権・商標権の侵害防止 6 緊急時の対応 炎上時の報告フロー・自己判断対応の禁止 7 違反時の罰則 就業規則との連動・損害賠償の可能性 8 社内の相談窓口 迷った時の連絡先・相談者の不利益防止

SNSガイドラインを実効性のあるものにするためには、盛り込むべき項目を網羅することが不可欠です。曖昧な表現を避け、誰が読んでも理解できるよう具体的に記載することが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。ここでは、企業のSNSガイドラインに必ず含めるべき8つの必須項目を、具体的な記載例とともに徹底解説します。

基本方針と目的

まず、ガイドラインの冒頭で「なぜこのガイドラインを策定するのか」という基本方針と目的を明確に示します。目的が共有されることで、従業員一人ひとりがガイドラインの重要性を理解し、主体的に遵守する意識が高まります。

目的には、単なるリスク対策だけでなく、SNS活用によるポジティブな側面も盛り込むと良いでしょう。

  • SNSの公式利用および個人利用に関する基本原則を定める
  • コンプライアンスを遵守し、企業としての社会的責任を果たす
  • 企業のレピュテーション(評判)やブランド価値を毀損するリスクを予防・低減する
  • 従業員を不必要なトラブルから守る
  • お客様や社会と誠実なコミュニケーションを築き、良好な関係性を構築する

これらの目的を、自社の経営理念や行動指針と関連付けて記載することで、より説得力のある基本方針となります。

SNS利用における心構えと責任の所在

次に、SNSを利用する上での基本的な心構えを従業員に伝えます。特に、個人のアカウントであっても「会社の看板を背負っている」という意識を持たせることが重要です。

  • 発信者としての責任: インターネット上に一度公開した情報は、完全には削除できない「デジタルタトゥー」として残り続けることを理解し、発信する情報に責任を持つこと。
  • 誠実かつ良識ある態度: 常に誠実な姿勢を心がけ、他者への敬意を忘れないこと。批判的な意見に対しても、感情的にならず冷静に対応すること。
  • 傾聴の姿勢: 一方的に発信するだけでなく、社外の様々な意見に耳を傾け、学ぶ姿勢を持つこと。
  • 公私の区別: 個人のアカウントでの発信であっても、プロフィールや過去の投稿内容から所属企業が特定される可能性があることを認識すること。会社の公式見解と誤解されるような発信は避けること。

また、責任の所在について「発信内容に関する第一義的な責任は発信者本人にある」と明記しつつ、「ただし、その内容によっては会社が使用者責任を問われ、ブランドイメージの低下や経済的損失につながる可能性がある」ことを伝え、個人の発信が会社全体に影響を及ぼすことを明確に認識させます。

具体的な禁止事項(情報漏洩・誹謗中傷・権利侵害など)

トラブルを未然に防ぐため、ガイドラインの中で最も具体的に記載すべき項目が禁止事項です。従業員が「これくらいなら大丈夫だろう」と誤った判断をしないよう、具体例を挙げて分かりやすく示しましょう。

禁止事項のカテゴリ具体的な内容と注意点
機密情報・個人情報の漏洩顧客情報、取引先情報、未公開の新製品情報、社内の人事情報、業績データなど、社外秘とされるあらゆる情報の投稿を禁止します。従業員やお客様の個人情報(氏名、住所、電話番号、写真など)の公開も厳禁です。
誹謗中傷・差別的発言特定の個人、人種、国籍、宗教、性別、性的指向、障がいなどを対象とした、差別的、侮辱的、攻撃的な内容の発信を禁止します。競合他社やその製品・サービスに対する根拠のない批判も含まれます。
第三者の権利侵害著作権、肖像権、商標権、プライバシー権などを侵害する行為を禁止します。他人の文章、画像、動画、音楽の無断転載や、許可のない人物写真の投稿などが該当します。(詳細は次項で解説)
公序良俗に反する内容わいせつ、暴力的、残虐な内容や、犯罪を助長するような投稿を禁止します。
インサイダー情報の利用株価に影響を与えうる未公開の重要事実(インサイダー情報)を知り得た場合、その情報を用いた投稿や株式売買等を行うことを固く禁止します。これは金融商品取引法違反にあたる犯罪行為です。
会社の公式見解との混同個人のアカウントにおいて、あたかも会社の公式な意見であるかのように誤解を招く表現を用いることを禁止します。政治的・宗教的な主張も同様です。

個人情報・機密情報の取り扱いに関するルール

禁止事項の中でも、特に重大なインシデントにつながりやすい「情報」の取り扱いについては、項目を独立させて厳格なルールを定めます。情報漏洩は、企業の信用を根底から揺るがす深刻な問題です。

個人情報の取り扱い

個人情報保護法の遵守を大前提とし、お客様、取引先、従業員およびその家族など、業務上知り得たあらゆる個人情報をSNS上で公開、または言及することを全面的に禁止します。「〇〇様にご来店いただきました」といった投稿も、本人の明確な同意なく行うことはできません。

機密情報の取り扱い

企業の競争力の源泉である機密情報の定義を明確にし、その漏洩防止を徹底します。

  • 機密情報の定義: 開発中の製品情報、技術情報、マーケティング戦略、財務情報、顧客リスト、契約内容、社内会議の議事録など。
  • 意図しない漏洩への注意喚起: カフェや電車内での会話、PCやスマートフォンの画面の映り込み、社内で撮影した写真の背景など、意図せず機密情報が漏洩するリスクについても具体例を挙げて注意を促します。

著作権や肖像権など第三者の権利について

SNSは手軽に画像や動画を共有できる反面、権利侵害が起こりやすいプラットフォームです。従業員が悪意なく権利を侵害してしまうケースを防ぐため、具体的なルールを設ける必要があります。

権利の種類具体的な注意点
著作権他人が作成した文章、イラスト、写真、音楽、動画などを無断で使用・転載しないこと。引用する場合は、引用のルール(出典の明記、引用部分の明確化など)を遵守すること。インターネット上で見つけた「フリー素材」も、利用規約を必ず確認し、商用利用の可否やクレジット表記の要不要をチェックすること。
肖像権・プライバシー権他人の顔や姿がはっきりと写っている写真を、本人の許可なく投稿しないこと。イベント風景など不特定多数が写っている場合でも、個人が特定できるような写真は公開を避けるか、ぼかしを入れるなどの配慮が必要です。
パブリシティ権有名人やタレントの氏名・肖像には、顧客誘引力という経済的価値があります(パブリシティ権)。許可なく有名人の写真を広告・宣伝目的で利用することは権利侵害にあたるため、絶対に行わないこと。
商標権他社の企業名、商品名、サービス名、ロゴマークなどを、自社の製品やサービスと混同させるような形で無断使用しないこと。

炎上など緊急事態発生時の対応フロー

どれだけ注意を払っていても、予期せぬトラブルや炎上が発生する可能性はゼロではありません。問題が発生した際に、従業員がパニックに陥り、事態を悪化させる行動(例:個人での反論、投稿の無断削除)を取ることを防ぐため、明確な対応フローを定めておくことが極めて重要です。

以下の要素を盛り込んだフローを策定し、周知徹底しましょう。

  1. 発見・覚知: 問題のある投稿や炎上の兆候を発見した従業員は、自己判断で対応せず、直ちに所属長および指定された緊急連絡窓口へ報告する。
  2. 報告(エスカレーション): 報告を受けた窓口(広報部、リスク管理部など)は、速やかに状況(投稿内容、拡散状況、批判の論調など)を整理し、関係部署および経営層へ報告する。
  3. 対策本部の設置と事実確認: 関係部署の責任者で対策本部を設置し、投稿の事実関係を迅速かつ正確に調査する。
  4. 対応方針の決定: 調査結果に基づき、投稿の削除、謝罪文の掲載、公式サイトでの見解発表など、具体的な対応方針を決定する。この際、法務部門や顧問弁護士の助言も仰ぐ。
  5. 対外コミュニケーションの実施: 決定した方針に基づき、会社の公式な立場として、誠意あるコミュニケーションを行う。誰が、どのチャネルで、どのようなメッセージを発信するのかを明確にする。
  6. 事後対応と再発防止: 事態収束後、原因を徹底的に分析し、ガイドラインの見直しや研修の追加など、具体的な再発防止策を策定・実行する。

ガイドライン違反時の罰則規定

ガイドラインの実効性を担保するためには、違反した場合の罰則を明記しておく必要があります。これにより、従業員はガイドライン遵守の重要性をより強く認識します。罰則規定は、必ず就業規則の懲戒規定と連動させる必要があります。

違反内容の重大性に応じて、以下のような段階的な処分を検討します。

  • 口頭での厳重注意、始末書の提出
  • 譴責(けんせき)、減給、出勤停止
  • 諭旨解雇、懲戒解雇

また、「ガイドライン違反により会社に重大な損害を与えた場合、懲戒処分とは別に、損害賠償請求を行う可能性がある」ことも付け加えておくと、より強い抑止力となります。

社内の相談窓口

最後に、従業員がSNSの利用に関して迷ったり、不安を感じたりしたときに、気軽に相談できる窓口を設置し、ガイドラインに明記します。窓口の存在は、トラブルの未然防止と早期発見に繋がります。

「この表現は問題ないだろうか?」「他社のアカウントから不適切なコメントが来たがどうすればいいか?」といった具体的な相談に応じられる体制を整えましょう。

  • 担当部署: 広報部、人事部、法務部など、相談内容に応じて対応できる部署を明記します。
  • 連絡先: 内線番号、専用メールアドレスなどを記載します。
  • 秘密の厳守: 相談したことやその内容が本人の許可なく他者に漏れることはなく、相談したことによる不利益な扱いは一切受けないことを明記し、従業員が安心して相談できる環境を保証します。

作成したSNSガイドラインを社内に浸透させる方法

SNSガイドライン社内浸透の4ステップ ガイドラインの 形骸化を防ぐ 1. 研修の実施 全従業員への教育 (集合研修・eラーニング) 2. 保管と周知 いつでも見れる状態へ (ポータル・チャット共有) 3. 理解度確認 当事者意識を持つ (テスト・同意書取得) 4. 定期見直し 現状に即した更新 (年1回の改定・再周知)

SNSガイドラインは、作って終わりではなく、全従業員が内容を理解し、遵守して初めて意味をなします。どれだけ完璧なガイドラインを作成しても、従業員に浸透していなければ形骸化し、いざという時に機能しません。ここでは、策定したガイドラインを社内に浸透させ、実効性を高めるための具体的な方法を解説します。

全従業員を対象とした研修の実施

ガイドラインを浸透させる最も効果的な方法の一つが、全従業員を対象とした研修の実施です。文章を読むだけでは伝わりにくい背景や目的、具体的なリスクを直接伝えることで、従業員一人ひとりの当事者意識を高めることができます。

研修では、以下の内容を盛り込むと良いでしょう。

  • ガイドライン策定の背景と目的(なぜ今、このルールが必要なのか)
  • SNS利用の基本姿勢と心構え
  • 具体的な禁止事項と、その理由
  • 過去に他社で発生した炎上事例とその原因・結末
  • 炎上などのトラブル発生時の報告・連絡・相談フロー
  • 質疑応答の時間

研修の形式は、企業の規模や状況に応じて選択します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に合った方法を選びましょう。

研修形式メリットデメリット
集合研修・双方向のコミュニケーションが可能
・緊張感を持ちやすく、内容が記憶に残りやすい
・その場で質疑応答ができる
・全従業員のスケジュール調整が難しい
・会場費などのコストがかかる
・拠点が多い企業では実施が困難
eラーニング・時間や場所を選ばずに受講できる
・従業員それぞれのペースで学習できる
・繰り返し視聴が可能で、理解を深めやすい
・受講者のモチベーション維持が難しい
・一方的な情報伝達になりがち
・システム導入にコストがかかる

新入社員向けの入社時研修に組み込むほか、年に1回程度の定期的な研修を実施することで、ルールの形骸化を防ぎ、常に意識を高く保つことができます。

いつでも閲覧できる状態での保管と周知

研修で一度説明するだけでなく、従業員が「あれ、この場合はどうだっけ?」と疑問に思った時に、いつでもすぐにガイドラインを確認できる環境を整えることが極めて重要です。アクセスしにくい場所に保管されていると、次第に誰も見なくなり、ルールの存在自体が忘れ去られてしまいます。

保管場所としては、以下のような全従業員がアクセスしやすい場所が考えられます。

  • 社内ポータルサイトやイントラネットのトップページ
  • 全社で利用している共有フォルダ(Google DriveやMicrosoft OneDriveなど)
  • ビジネスチャットツール(SlackやMicrosoft Teamsなど)のブックマークや情報共有チャンネル

そして、保管するだけでなく、ガイドラインの存在と保管場所を全社に周知徹底する必要があります。全社メールでの通知や、社内報での定期的なリマインド、入社時のオリエンテーションでの案内などを通じて、全従業員が「SNSで迷ったら、まずあそこを見ればいい」と認識している状態を目指しましょう。

理解度テストの実施と同意書の取得

ガイドラインの浸透度をさらに高めるためには、研修後の理解度テストや、内容を遵守することへの同意書取得が有効です。これにより、「研修を受けただけ」「読んだだけ」で終わらせず、従業員一人ひとりが内容を正しく理解し、ルールを守る責任があることを自覚するきっかけになります。

理解度テストでは、特に重要な禁止事項や緊急時の対応フローなど、絶対に間違えてはならない項目を中心に出題します。合格点に満たない従業員には再研修を行うなど、フォローアップ体制も整えておきましょう。

また、同意書に署名・捺印をしてもらうことで、従業員の心理的なコミットメントを高める効果が期待できます。これは、万が一ガイドライン違反が発生した際に、会社として然るべき対応を取るための根拠の一つにもなり得ます。

ガイドラインの定期的な見直しと更新

SNSを取り巻く環境や社会の価値観は、日々刻々と変化しています。新しいSNSプラットフォームの登場、法改正、社会的な炎上トレンドの変化などに対応するため、SNSガイドラインは一度作成したら終わりではありません。

最低でも年に1回は内容を見直し、現状にそぐわない部分がないかを確認するプロセスを設けましょう。時代遅れのルールは、ガイドライン全体の信頼性を損ない、形骸化を招く原因となります。

ガイドラインを更新した際には、その変更点を明確にした上で、改めて全従業員に周知することが不可欠です。研修や社内報などを活用し、「なぜこのルールが変更されたのか」という背景まで丁寧に説明することで、従業員の理解を促し、常に最新のルールに基づいた行動を徹底させることができます。

SNSガイドラインの作成や運用は専門家への相談がおすすめ

SNSガイドラインは、法的な知識や日々変化するSNSのトレンド、多様化する炎上事例など、多岐にわたる専門知識を要します。著作権法や個人情報保護法といった法律の解釈はもちろん、プラットフォームごとの仕様変更やユーザー文化の変化にも対応しなければなりません。これらの情報をすべて自社の担当者だけで収集し、正確かつ実用的なガイドラインに落とし込むのは、非常に困難であり大きな負担となります。

そこで推奨されるのが、SNSのリスク管理を専門とする外部のプロフェッショナルへの相談です。専門家は豊富な知識と経験に基づき、企業の現状や事業内容に即した、より実効性の高いガイドラインの策定をサポートしてくれます。策定後の運用や、万が一のトラブル発生時にも頼れるパートナーとなるでしょう。

炎上対策のプロ「シエンプレ」に依頼するメリット

SNSリスク対策の専門家は数多く存在しますが、ここでは代表的な企業の一つとして、Webリスクコンサルティングを手がける「シエンプレ」を例に、専門家へ依頼する具体的なメリットを解説します。

シエンプレのような専門企業は、SNSガイドラインの策定から従業員教育、そして有事の際の炎上対応まで、一貫したサポートを提供しているのが特徴です。自社だけで対応する場合と比較して、以下のような多角的なメリットが期待できます。

シエンプレのような専門家に依頼するメリット具体的なサポート内容
最新の知見に基づいたガイドライン策定国内外の膨大な炎上事例やSNS上のトレンドを常に分析しており、それらの知見を反映した実践的なガイドラインを作成できます。形骸化しない、本当に役立つルール作りが可能になります。
法務と実務の両面からのアプローチ提携する弁護士によるリーガルチェックはもちろん、実際のSNS運用現場で起こりうるヒューマンエラーや判断に迷うケースを想定した、実務的なアドバイスを受けられます。法的な正しさと、現場での使いやすさを両立できます。
策定後の浸透・運用フェーズの支援ガイドラインを「作って終わり」にしないための、従業員向け研修プログラムの提供や、eラーニングコンテンツの作成支援が受けられます。全社的なリスク意識の向上と、ルールの定着化を強力に推進します。
緊急時対応(クライシス対応)の安心感万が一炎上が発生してしまった際に、初動対応のアドバイス、鎮静化に向けたコンサルティング、対外的な発表内容の添削など、事態が深刻化する前段階から迅速かつ的確なサポートを受けられます。自社だけで混乱の中対応するのに比べ、被害を最小限に抑えることができます。

このように、専門家に依頼することは、単なるガイドライン作成のアウトソーシングではありません。企業のブランド価値と従業員を守るための、継続的なリスクマネジメント体制を構築する上で、非常に有効な投資と言えるでしょう。

まとめ

本記事では、企業のSNSガイドラインの作り方について、盛り込むべき必須項目や作成ステップを具体的に解説しました。SNSガイドラインは、企業のレピュテーションを損なう炎上リスクを未然に防ぎ、従業員と会社のブランド価値を守るために不可欠な存在です。SNSの利用が一般化した現代において、企業が健全な活動を続けるための重要な防衛策と言えるでしょう。

ガイドライン作成にあたっては、「目的の明確化」から「専門家によるリーガルチェック」までの5つのステップを着実に踏むことが重要です。特に、情報漏洩や権利侵害などの「具体的な禁止事項」や、万が一の「緊急時対応フロー」は必ず含めるべき必須項目です。これらを網羅することで、リスクへの備えがより強固になります。

また、ガイドラインは作成して終わりではありません。全従業員への研修や継続的な周知活動を通じて社内に浸透させ、実効性のあるルールとして機能させることが成功の鍵です。本記事で解説した内容を参考に、自社の実情に合ったSNSガイドラインを策定し、安全な情報発信体制を構築してください。

【PR】関連サイト

シエンプレ

詳細情報

〒107-0052 東京都港区赤坂4丁目2−19 8F

URL:https://www.siemple.co.jp/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次